リモートワークとうんち

余は

リモートワークである。一度も会社には出社しない強い意志の持ち主で、自宅で仕事をしている。

ともに暮らすポコ丸は自宅警備員だ。極度の潔癖症である。ポコ丸のトイレに対する執着心は異常だ。外出して自宅のトイレが遠のくと、とたんに不安にかられてしまう。もともと胃腸が弱いせいもあり、うんちの急襲が珍しくない。しかし潔癖症であるため、唯一安心できる清潔なトイレは自宅のそれだけなのである。

トイレは

常に清潔かつ無臭でなければならない。ポコ丸は、平均して1日に10回程度、かなり入念なトイレ掃除を行っている。ポコ丸にとって、トイレは聖域。絶対に汚されてはいけない場所なのだ。

そんな聖域が今、脅かされている。余がリモートワークだからだ。余という尊い存在がポコ丸の聖域に毎朝進攻し、その聖域にうんちをまきちらすという、蛮行が行われている。ゆゆしき事態の発生だ。

なんとかこの敵に対処しなければならない。ポコ丸は強い危機感をあらわにした。

まず、さまざまなトイレグッズが導入された。毎日のように、アマゾンから消臭剤をはじめ、除菌グッズが届く。今日も、巨大なポリタンクに入った業務用のメチルアルコールの消毒性能を試す運用試験が行われている。

新しいルールもできた。余は、トイレにはいる前に、トイレ占有の目的を高らかに宣言しなければならない。

うんちお願いします!

しかし時に、その宣言が否決されることもある。まさかの、シンクロ便意が起こってしまったときだ。そのような時は、お互いに、自分のうんちがどれだけ切迫した位置にあるのかをプレゼンしなければならない。プレゼンでの敗北が続くと、我慢している間にうんちが引っ込んでしまう。

時間制限も設けられた。トイレ占有時間が5分を超えると、持ち時間を使い切ったものとして、カウントが開始されるようになった。将棋や囲碁の対局であるような、「10秒、20秒、」といった秒数カウントがトイレのドアの向こう側から聞こえてくる。カウントが増えたとしてもこれといってペナルティはないのだが、これではゆっくりうんちする気にはならない。

会社に出勤していたころは、トイレは極上のリラックスタイムだった。スマホをいじりながら、ゆっくりうんちする時間を満喫していた。

どころが今はどうだ。まさに1分1秒を争いながら、うんちを効率的に排出しなければならない。戦場である。

リモートワークによって、余のうんち事情は一変してしまった。

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