恋に恋するメルヘンちゃん
メルヘンちゃんと
菩薩さんには10年ほど前に仕事で出会った。当時、彼女たちは同じ会社で働いていた。その会社の社長は自称経営コンサルタントだった。彼は、自分の顧客が経営上必要とする最先端のシステム開発、つまるところ、ただのホームページ作成などを請け負っていた。余はその社長と知り合い、ふたりと出会い、そうして友人になった。今でも友人関係は続いている。と、信じたい。そんな彼女たちと、ひさしぶりに会うことになった。オンラインで。
メルヘンちゃんは、ジャニオタであり、ディズニーオタである。出会った当時から今まで、そのスタイルを貫き通している。今回も、ディズニーでしか手に入らないであろうTシャツを来てオンラインに現れた。かわいらしい外見にそぐわず、彼氏いない歴の記録を今年も更新したという。さらに今年はコロナの影響で推しのジャニーズツアーが中止となり、遠征もできず日本経済をまわせなくなった、と嘆いている。
菩薩さんは、包容力の塊だ。この10年で結婚し、母となった。菩薩さんと話すだけで癒される。ココロが浄化される。オンラインの途中、乱入してきたキッズを優しい表情でたしなめる、家の中でしかみられないような神々しい姿を垣間見た。もはや如来降臨である。
ひととおりお互いの近況を報告し終わると、メルヘンちゃんの恋愛相談になった。いつものパティーンだ。メルヘンちゃんいわく、『キスも経験せずにこのまま人生を終えるなんて嫌』なのだそうだ。どうやら最近、ステイホームが続き、韓国ドラマをみまくった影響で、少女漫画のような超展開恋愛に憧れているらしい。ならば、メルヘンちゃんは大富豪の運転する車に跳ね飛ばされて記憶を喪失する必要がありそうだ。なにそのクレイジーな展開、デュフフ。などとメルヘンちゃんとふたりで妄想話で盛り上がっていると、菩薩さんの「職場とかにきになるひととかいないの?」という質問により、秒で現実に引き戻された。メルヘンちゃんいわく「職場にはハゲ散らかしたオヤジばっかりで恋愛対象がいない」らしい。
でも待って。
私たち、いまアラフォーよ。いちねんが年々早く感じるお年頃。アラフィフだってすぐそこだわ。よもや、私たち自身がハゲ散らかす危険すらあるのよ。
それでも、メルヘンちゃんは恋がしたい。
これまで、メルヘンちゃんの恋が現実になるチャンスがなかったわけではない。しかし、恋が現実味を帯びると、彼女はそのチャンスを自らの手で叩き潰してきた、クラッシャーなのだ。以前、何度目かのデートで手をつなごうとしてきた男性の手を鬼の形相で振り払ったと語っていた。その男性が気の毒でならない。
メルヘンちゃんは、恋が現実になって男女の関係に発展することを想像するだけで、生々しさと嫌悪感を感じるのだそうだ。永遠のバージンロードではないか。メルヘンちゃんは「こじらせを通りこして、ひねっちゃった状態だからこれからも彼氏ができることはないかもしれない」と自分で自分を分析している。なんという的確な分析。有り余る愛は絶対に手の届かないアイドルに注ぎ、妄想で心を満たしているのだそうだ。
メルヘンちゃんは、今日も、恋に恋をしている。