西川少年は勝ち組
小学生の頃、
同じクラスに、西川くんという同級生がいた。ドラえもんでいうところの出来杉くんキャラである。いつも鼻をグシュグシュいわせていた。おそらく蓄膿症だ。西川くんは、親がふたりとも教師で、特に西川くんのオカンはスパルタンで有名だった。休み時間も予習復讐に明け暮れる、ガリ勉キッズの毎日は、いちミクロンも楽しそうには見えなかった。余は本能的に、西川くんは違う世界線の生き物なのだな、と思っていた。
余はというと、書道の分野では一目おかれる、いわば、小学生書道界隈のモンドセレクションだった。すべては書道教室の先生の指導の賜物だっただけなのだが、モンドセレクションだったがゆえに、西川くんのスパルタンオカンにロックオンされてしまった。
西川くんのスパルタンオカンは、余の通う書道教室に自分のムスッコを潜り込ませるようになった。当時余は書道以外の習い事もしていたのだが、あらゆる習い事の教室に、西川くん親子は現れた。
お正月。
書き初めという、余にとっての年イチ大切な舞台で、西川くんは毎年、宿敵として現れた。たったひとりのモンドセレクションの座をかけて、仁義なき戦いが幕を開けるのだ。
小学生最後の大会ではじめて、余は西川少年に負けた。涙がとまらなかった。悔しくて泣いたのは、あの時が初めてだったと思う。
のちにオカンは、保護者面談で担任から「実力では西川くんの負けでした。でも、これまでずっと負け続けてきた西川くんに小学6年生の最後ぐらいは華を持たせてあげたかったんです」とフォローされたらしい。
意味が分からない。ふざけるのもいいかげんにしてほしい。こっちは全力で戦っているというのに、なんだその理由。小学生最後の大会っていうのは西川少年にとってだけでなく、余はとっても同じだったんですよ?
大人の事情もちこんでんじゃねーよ。
余は西川くんを心底嫌悪した。親に決められたレールに乗っかってただクソ真面目に生き、実力に見合わない結果を手にする。なんだそのクソおもんない人生は!結果、勝ち組じゃねーかっ!裏山けしからん!